私はこの「黒川の女たち」のドキュメンタリーに対して、あまりに愚かな過去の日本を浮き彫りにするだけではなく、この事件を丁寧に掘り下げたことに強い敬意を抱く。映画監督の松原文枝氏は、歴史修正主義が蔓延る時代への逆風としての作品を彼の代表作として叩きつけた。犠牲を強いられた彼女たちの告白は、単なる苦しみの露呈ではなく、隠蔽されてきた真実を自身の尊厳回復を伴って公開したものだ。
当時、彼女たちに背を向けた日本社会の非情さは理解しがたい。未婚女性を差し出す選択に走った村の幹部たちも、戦後に彼女たちを誹謗中傷した人々も加害者である。その彼女たちを蔑むことは、戦後の日本が犯したもう一つの罪なのだ。
ここで問うのは、戦後世代の我々が過去の過ちをどのように受け止めるのか。残酷な選択をした彼らは確かに被害者であるが、その背後に堅固な加害の構造が存在していたことを認識できるか。
現代の社会では多くの歴史が繰り返し、性接待に巻き込まれる人々の話は、まだ解決されていない傷として存在するのではないか。戦争だけでなく、日常に潜む暴力にも目を向ける覚悟があるのか。倫理と道徳に頼らず、個の視点で歴史を受け止めることができるのだろうか。
この犠牲を、戦後80年遅れで語ることが正義とされる日本で、それを受け入れ再発防止にどのように立ち向かうべきか。現代における戦争の形は変わっても、その根源にある暴力と不正義は変わったのか。
コメントでの議論を通して、更なる深い考察につながれば幸いだ。
優れたコメントの一部を紹介します。
「戦後80年経っている。もっと早くこの酷く非人道的な事実を世に知らしめるべきだった。都合の良い事ばかりを拡散し、隠したい事実には徹底的に隠す。昭和の最も愚かな政治判断で庶民を苦しめた。令和の世になっても、その愚かな時代と変わって無い気がする。」
「私の祖母は終戦間近まで満州の北で食堂を営んでいましたが、日本の実家の母が体調を崩したと連絡があって、昭和20年に日本へ帰国しました。もし連絡がなかったらソ連侵攻に巻き込まれて命を落としていたかもしれない。恐ろしいと思う。」
「職場の高齢者施設で90歳以上の女性陣から「戦後の日本を支えてくれたのは、アメリカ兵を相手にしてくれたパンパンさん」と言われていた。この記事にも共感できた。同じ女性として、当時の女性への尊厳の低さみたいなのが許せないですね。」
「満州で人身御供の様に扱われた彼女達が帰国した日本で差別を受け、その後の人生を狂わせた。当時の人達の残酷さに身震いします。ただの生きる為の選択だったのに。」
引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/e6c66c86800fd8fd53b39962d2d9e824c9c1cac3,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]